※ネタバレ注意!
・作者は「スラムダンク」で有名な井上雄彦、原作は「三国志」で有名な吉川英治。
・吉川英治「宮本武蔵」を元にアレンジが若干は言っている。題名の「バガボンド(vagabond)」とは、英語で「放浪者」「漂泊者」を表す模様。
・細かく描かれた迫力ある絵と、わかったようでわからない抽象的な台詞が特徴。
・ここ最近、バトル漫画から農業漫画になり、本ブログの守備範囲に入ってきたので、感想を書きました(;・∀・)
・37巻では、飢えた村人のために、あの傲慢不遜な武蔵が、権力者に頭を下げる衝撃的な場面からスタート。
・剣術バカの武蔵、農業バカの秀作。相容れない二人が、それでも協力して、村の水田を成功させようとするが・・?
・長期間、剣術と関係ない農業編を描くことで、作者が表現したかったものは?
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私は吉川英治「宮本武蔵」は読んでなく、一般的な宮本武蔵の知識と、司馬遼太郎「新説宮本武蔵」を読んだ知識しか持っていません。
この小説の武蔵。
才能に偏りすぎて誰にも真似できない一世一代の剣客、異常なほどの権力志向でありながら世の中に認められない可哀想な存在、として書かれていて、衝撃的でした(;・∀・)
それをベースに37巻を読むと「あれっ」「よかったなぁ(´;∀;`)」と思いました。
秀作の稲の育て方
私は稲作の素人ですが。秀作の稲の育て方を書いてみます。
種まき
いいか 知っての通り 余分な種籾は一切ない
もしーー
もしも失敗したら 収獲にこぎつけられなかったら・・
今度こそ俺たち全員餓死だ・・!
これから育てるこのひとつぶの中に 俺たちの命も入ってると思え
等間隔に指で穴あけてまいていく
武蔵が土下座して身売りして、当面の食料を得た村人。
この稲作に失敗したら全滅必死。
緊張感が、真剣度が、違います。
苗
蛙が出てきたので、田植えの開始を訴える村人の願いを、秀作はつっぱねます。
蛙にもオッチョコチョイな奴がいる
春が来たと早とちり
寒の戻りがあるとも知らず
春になったと、暖かくなったと思ったら、突然寒くなり、あわてて冬物コートを取り出すのは、現代と同じ。
蛙が十分な数出てきてーー
それを食う蛇が出てきたら田植えだ
何かが旬になれば、それを餌にする何かが出現する。これが自然界の法則ですね。
苗は赤子と同じ
自分の足で立つまでは人の手をかけてやらねば
生きる土台ができるまでは
確かに、芽が出たばかりの農作物は弱すぎる。
私もどれだけ芽が出ては枯れていった姿を見たことか(´;∀;`)
武蔵「それは?」
秀作「むしろをかけてある。苗は冷えに弱い。」
普通に武蔵が質問(・ω・;)
一日でも早く田植えしたい
早く収獲したいのは俺もわかる
だがこいつらを外に出したらもう戻れない
なけなしの種
田植えしてそれでもししくじったら
もう一度言うぞ
全員飢え死にだ
死を前に出されては、反論もできず、とぼとぼ帰宅する稲作初心者の村人達。
しかし秀作に、自信があるわけではない。
なあ 教えてくれや どうしたらいい
しくじらずに必ず実るやり方は・・?
ないわなそんなもんは ふふ
農業に絶対はない。
失敗できないプレッシャーに一人で耐える秀作。
それを見た武蔵は何を感じたのか。
田植え
蛇が出てきたので、田植えスタート!
もっとこう手首を使って・・
クイ!
しっかりと根が張るように!土にクイッと!
長嶋茂雄?(・ω・;)
田んぼの手入れ
雑草はとってるか?
そっちの田んぼ
ほっとくとあっという間に伸びるぞ
見ろこの・・コナギの強いこと
稲よりずっと早く伸びる・・
そうなると日が当たらなくなってしまう
赤子の住むふかふかの部屋に乱暴者が押し入るようなもん
赤子・・稲は弱いことが嫌という程わかる表現ですね。
嵐!
稲が育ってきた頃、嵐がやってきてきました。
天下無双の武蔵ですら、無力。神に祈るしかない状態。
嵐が過ぎ去った後。
ところどころダメになったかも知れんが・・
大方は大丈夫だろう
また立ち上がる
思いのほか成長が遅くまだ丈が短い
それが逆に幸いしたかもしれん
わかる(´;∀;`)
※( ・∀・)つ[レンタル畑]2014/7/11 台風8号襲来!嵐からトマトとトウモロコシを守れ!
台風が気になって畑へ。トウモロコシの先端が折れてた_(:3 」∠ )_
もっとも、実はほぼ完成してるので影響なし。
他は大丈夫でした‹‹\(´ω`)/›› pic.twitter.com/NDKC52TvbY
— tokainakurasi (@tokainakurasi) 2014, 7月 11
背が高いと風の影響をモロにうけるのよね。。
畦(あぜ)
オイお前ら
田んぼ広げるのはいいが
畦をしっかりつくれよ!
田を作るより畦をつくれってな
昔からよくいったもんだ
畦は、田んぼの横の通路のこと。ここが重要なのか。
豊ノ助豊左衛門
大変だ
畦の草も刈らなくてはならんのだな
秀作
伸び放題にしてたらどうなるよ
その下の低い草に日が当たらず枯れちまうだろ
地を這うような低い草は
人にふまれても生きて
土に強い根を張る
その根が崩れない畦をつくる
似たことを、森の専門家から教わりました。
※( ・∀・)つ相模原のトランジション藤野・森部に初参加!森は水&風&光で命を拾い、私は眼鏡を森に落とす
続いて草刈り。
鎌や草刈り機を使います。
あえて刈りすぎず、風で一番揺れる重心?を刈り、周りの草の高さをそろえます。
これで風の通り道がよくなるとか。 pic.twitter.com/wj18cu4luZ
— tokainakurasi (@tokainakurasi) 2014, 5月 24
草の高さを統一にしないと、背丈の低い草が死んでしまうとか。
畦は草の根で強化される。
畦を強化するには草刈りが必要。
稲をよく見て教えてもらう
田んぼによく入って歩けよ
雑草が生えにくくなる
よく見てやれ
虫にやられてやしないか
病がないか
病気があったらあったで
抜くしかないのか
それとも治るのを待てるのか
よく見てる人間には答えを教えてくれる
対象をじっくり観察して、何をすればよいか教えてもらうのが大事。
私も、本屋参考書を読んでも、さっぱり畑の作物の管理がわかりませんでした。
足繁く通い、日々の変化を見逃さず、こまめに手入れすることが大事ですね。
流れができると風が吹く
葉っぱの間に風が通る
くっつきすぎてるのも病気のもとだからな
人間と同じ
稲作が秀作の人生の教科書なんですね。
人の毒
体調を崩した秀作に、武蔵は休むよう告げると。
秀作
休むとかえって調子悪くなる
土に出て働いて
やっと人の毒が流れていく
武蔵
?
何だ人の毒って
秀作
恐れ
迷い
こいつらにはない
人だけの毒
分かる気がする。
農業かじって、私も体調がよくなってきたし。
分を越えて収獲する必要はない
いよいよ収穫間近。
武蔵は、ダメになった稲を惜しみます。
武蔵
病にやられたのがあり・・
虫にやられたのもあり・・
これまでに三割くらいは枯らしたりやむなく刈ったりした
もったいなかった
秀作
そのくらいがいい
いや、もったいないでしょ?
分を越えて受け取って・・良いことはない
お前らの世界でも・・
必勝不敗・・そんな者はおらんだろ
過ぎたるは猶及ばざるが如し?
負けを経験した人の方が伸びる?
まだ私はこの考えがわからない。修行が足りないな(´・ω・`)
剣術
このままだと農業マンガで終わっちゃうので、剣術も(;・∀・)
腕はないと思え
剣術教えろ!とお願いしにきた女性達に、武蔵、剣術指導。
てきとうに振っててください
(;・∀・)
あ・・言い忘れました
腕はないとおもって振ってください
・・誰も理解できていない(;・∀・)
自分の体とは違うものを持ってるから
放しちゃいけないと力いっぱい振る
手にしたその得物で相手を斬る余計に放すまいと力を入れる
でもその力は相手を斬るのには使われず
自分を縛るだけ
執着しすぎるなということ?
思えばこの漫画の武蔵は。
「ぬたぁん」と言いながら剣を振ったりしてたように。
自然体、自由、執着しない、を重視していますね。
脚を斬られてからしばらくは
体の声は何も聞こえなくなった
踏んばれないので余計に腕ばかりに頼っている・・と
気づいたのは割と最近
腕は真面目でがんばり屋
欠点は一人でがんばりすぎること
脚や腹や腰やヘソ
ほかの連中をすぐ忘れる
だから時々腕はないと思って振る
吉岡一門との死闘で、脚が不自由になった武蔵。
一時は弱くなったものの、身体全体のバランスと使い方に気づいたのか、新たな境地を見つけた様子。
おや、秀作の「必勝不敗・・そんな者はおらんだろ」と、関連性が出てきた?
おっとその前に
空を見る
風が変わる
油断すると、ポエムが入ってくるなぁ(;・∀・)
一対多の戦い方
武蔵を後ろから複数で襲う女性達。
あっさりかわした武蔵。
・・なるほど一対多の戦いについてですか
なにか言い始めた(;・∀・)
まぁやる気になったことだし、ちょうどいいから聞きますか。
一番いいのは多勢に無勢の闘いなどしないこと
とっとと逃げることです
出来る人ほど、見切りをつけて逃げることを勧めている気がします。
そうもいかないときは・・
色の違うところから崩す
いちばん出来るものをまず斬る
すると全体に動揺が広がり集団が案外鈍く崩れることがあります
まずはリーダーを狙え!というやつですね。
多数がひとつの命をなしている集団はめったにない
ひとりの体ですがら・・腕の一人相撲だったり脚が遅れたり
ばらした個がまたひとつになって動くのは簡単ではない
戦場における心理、
サッカーにおける試合中、
いろんなことに応用できる気がします。
旅の終わりが見えた武蔵
ここ、私が一番好きだった所です。
小倉で城勤めすることになる武蔵。
秀作から、いままでの旅がどんなだったか聞かれ。
馬が大量の荷物と死体を運ぶ、凄惨なイメージを思い浮かべる武蔵。
でもその後。
力を抜き、地面に座り込み、笑顔になる武蔵。
人殺しの罪にうなされ、精神的に追いつめられていた武蔵。
その心理的負担から、ついに解放されたのか?
自分の過去を笑って流せるようになりました。
命を奪う剣術。
命を生かす稲作。
相反する二つが、武蔵の中で一つになった瞬間でした。
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