※今巻だけでなく、シリーズ全般のネタバレあり!要注意!
2015/2/5発売。
「銀河英雄伝説」「アルスラーン戦記」で有名な田中芳樹の最新SF小説シリーズ「タイタニア5 < 凄風篇>」(シリーズ最終巻)の感想です。
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目次
本はこちら
(昔から絵の担当が変わったので、たぶん以下で合ってるはずですが)
表紙、中央の白い服が藩主のアジュマーン・タイタニア、
右の紅い服の青年がW主人公の1人ジュスラン・タイタニア、
手前のちびっ子がリディア姫?、
一番右の金髪がアリアバート・タイタニア?、
一番左の緑服がイドリス・タイタニア、
残ったジャケット来てるのがW主人公のもう一人ファン・ヒューリックかな。
前巻の感想をざっくりと
タイタニア4<烈風篇> (講談社ノベルス)< 烈風篇> (講談社ノベルス)
・裏切り者の「アリアバート&ジュスラン(AJ連合軍)」 vs 藩主アジュマーンの支持を得ている「イドリス(天の城勢力)&ファン・ヒューリック(流星旗軍)」 の戦いが始まった!(天の城事変)
・でもイドリス陣営はバラバラ。
藩主のアジュマーンはイドリスを放置どころか足を引っ張り、
弟のラドモーズ・タイタニアは無能、
テオドーラ・タイタニアは裏切る気まんまん、
テリーザ・タイタニアはうるさいだけ、
挙げ句の果てにヒューリックは逃亡。
結局、イドリスは全部一人でやる羽目に。
・対するAJ連合軍は、屈指の用兵家であるアリアバートが作戦指揮を、優れた政治家であるジュスランが後方支援を担当する理想的な布陣。
・結局、イドリス陣営を完膚なきまでに打ち負かした。
・無難に進んだストーリー、ラストで大変なことに。
イドリスが唯一心を許した弟のゼルファ・タイタニアが、アジュマーンにそそのかされ、なんと停戦交渉の場でアリアバートを暗殺!!
どうなるのこれ??
・・という所で5巻に続く。
当時の簡単な感想はこちらに書きました。
5巻の感想
・5巻、良かったと思います。言葉の前に「とても」がつけられないのが残念。
・停戦交渉決裂。「AJ連合軍」 vs 「イドリス(天の城勢力)」 再戦へ。
・ここで誰もが予想しなかった展開に。ここまで無能扱いだったラドモーズ、突然の覚醒(ヤケとも言う)!
イドリスに代わってAJ連合軍と戦いますが、なんとこれが5巻のメインバトルに!誰得だろう・・。
・幼い頃から無能者扱いしていた弟ラドモーズが、有能な兄のイドリスを差し置いて活躍する、強烈な「皮肉」。
イドリスの超巨大戦艦「黒太子号」に乗り込み、「敵も味方も皆殺し」する暴挙に出てしまう!これががうまくいき、イドリスが手も足も出なかったAJ連合軍に大打撃を与える!
4巻からやることなすことさっぱりだったイドリス、とても可哀想だった・・。
・「味方の損害を減らし、敵の損害を増やす」常識的なAJ連合軍は、「味方ごと敵を砲撃する」「超巨大戦艦で相手を文字通り蹴散らす」非常識なラドモーズに、あわや敗北の危機に!
素人が思いも寄らぬ方法で玄人を追い詰める「皮肉」。
・この大ピンチを救ったのは、流星旗軍のドクター・リーにより、ゼルファとの奇妙な人質交換の結果、一人だけジュスランの客人となった「乱戦、混戦、暴走、潰乱のなかでこそ活躍できる」ヒューリック!
ラドモーズが追ってこない天の城軍を、反転逆包囲戦術で反撃、見事30分で掃滅!
・その後、ラドモーズは暴力と恐怖で部下を統制、天の城に向けて砲撃するなど常人ではよくわからない破壊活動の限りをした挙げ句、「銀河英雄伝説」の貴族連合軍を思わせるような最後をとげる。。
ここまでした理由は、本人の口からはっきりとは語られなかったものの、藩主アジュマーンと同じ心理だったことが判明。
5巻前半のMVPはラドモーズ!いろいろと考えさせられました。
・ここまではよかった。問題はその後。
・後は部下に任せて戦艦の中で待機していればいいのに。
なぜか単独で天の城に乗り込むジュスラン、バルアミー・タイタニア、ヒューリックの3人。アジュマーンを詰問&アリアバートの敵討ちという理由はあるけど、急展開すぎる。
おまけに流星旗軍のメンツ、なぜか侍女のフランシアも突入!
・この超展開、気にしては負けだ!なぜなら「最後は白兵戦」は田中芳樹の得意技だからです。
銀河英雄伝説10 落日篇
「銀河英雄伝説」のラストは、ラインハルトの旗艦「ブリュンヒルト」に、イゼルローン共和政府の軍事的指導者ユリアンが突入。
マヴァール年代記(全) (創元推理文庫)
「マヴァール年代記」のラストは、両軍とも部下をほっぽりだして、カルマーンとヴェンツェルの大将同士の一騎打ちで幕を閉じました。
それが本作でも適用されただけです!いくらストーリーに整合性がなくても気にするな!
・新キャラが登場しない分、なぜか侍女のフランシアが戦闘タイプにキャラチェンジ!果敢に戦場に突っ込みます!
アリアバートの死を引きずって5巻中はずっと精彩を欠いたジュスラン、
5巻でちょっとしか活躍しなかったヒューリック、
肝心なラストバトルでなぜか撤退命令に従ったバルアミーらを尻目に、フランシアは5巻で最初から最後まで大活躍。
これは予想できなかった・・。
ラドモーズとフランシアのキャラ設定の変更が、5巻の最大の驚きでした。
・ずっと不気味だった藩主アジュマーンの真意が、ついに5巻中盤から判明。
ラドモーズに権限を与えた理由も納得。
1人の人間に強力な権限を与えると世界はこうなる、という強烈な「皮肉」。
・ラドモーズとの艦隊戦に比べると、ラストのアジュマーンとのバトルはオマケ。仕方ない。
・皆殺しの田中芳樹にしては、不本意な死を迎えたのは1人だけ。奇跡。
フランシアが急に頑張りだした時は「やめろー!」と思いましたが・・よかった( ;´Д`)
・ラストを、全て最後まで書いてくれてよかった。
ある意味ジュスランが望んだ人生が手に入ったし、ね。
・ハルシャ六世の影の薄さは、それはそれでよかった。
シリーズ全体の感想
とにかくシリーズ完結を喜ぼう
・未完作品が多い著者ですが、よく完結してくれた!その安堵が第一です。
タイタニア 1<疾風篇>2<暴風篇>3<旋風篇> (講談社ノベルス)< 疾風篇>2< 暴風篇>3< 旋風篇> (講談社ノベルス)
・1988年12月に1巻が出てから26年で完結!長かった!(上記は新書なので発売は後ですが)
・四半世紀も経っていれば、1巻からずいぶん変わるもの。それは仕方ない。
ジュスランの寂しさと妥協
当初から隠居めいた発言が目立ったジュスラン。
それでも4巻ラストまでは非常に魅力ある人物でしたが。
4巻ラストでアリアバートを失った後、一気に精彩を欠きます。
未来の構想も、頼れる盟友も、消え去ってしまったジュスラン。
そのジュスランの寂しさが、5巻全体に溢れ帰っており、作品の良いスパイスになっていました。
なかなか自分の気持ちが決まらなかったのですが、ついに、
そう、自分には、死せるアリアバートと、生けるヒューリックがついている。
この、ある意味妥協で、自分を納得する事に。
ああ、悲しい、寂しい(´;ω;`)
ジュスラン、バルアミー、ヒューリック
「まさか、このふたりと肩を並べて戦うことになろうとはな」
ジュスランからすれば、二人の才能は認めているものの、「仕方ない」と妥協している気もします。
作品に大きな陰を落とした点では、「銀河英雄伝説」のラインハルトとキルヒアイスを思わせる展開でした。
ワクワクする戦いを楽しみたいなら、4巻の方がお勧めです。
ビッグマッチが少なかったのが残念
「銀河英雄伝説」のラインハルトvsヤン、
「マヴァール年代記」のカルマーン vs ヴェンツェル、
「アルスラーン戦記」のパルス軍 vs ヒルメス一派 。
これらに比べると、本シリーズはビッグマッチが少ない印象です。
W主人公の1人、ヒューリックが最後まで組織的な大勢力を率いる事がなかったこと。
AJ連合軍が強すぎて、ライバルが軒並み劣勢だった事(4巻のイドリス率いる「天の城軍」が、一番大きな敵勢力でしたが・・イドリスが孤軍奮闘してたので、好敵手足り得ず。
せめて藩主アジュマーンが最後に一軍を率いてAJ連合軍に対峙していれば、もっともっと盛り上がったでしょうが・・
本シリーズのテーマが「タイタニア一族という宇宙随一の巨大勢力」である以上、タイタニア陣営と対等に戦える戦力は他にないのは、当然と言えば当然ですが・・。
他作品に比べると、大きな盛り上がりに欠ける印象はありました。
準主役級が活躍できなかった印象
これも「タイタニア一族が有能すぎる」作品であることを思えば、故意だったかもしれませんが。
他の著者の作品に比べると、主人公格以外に魅力ある&有能な人物がいなかった気がします。
流星旗軍内の軽口は、最後まで「銀河英雄伝説」の帝国軍&同盟軍内の軽口や、「アルスラーン戦記」の十六翼将内の仲良し&質の高い軽口に及びませんでした。
「お金」「オムレツ」「皇女らしくない」「教授の講義」に最後まで固執しすぎて、広がりが無かったかな・・。
ともかく。
これで一つのシリーズが完結しました。
次はアルスラーン戦記ですね!(頑張って盛り返してくれ!
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